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2021年度 ものづくりプロジェクト製作作品

 新潟大学工学部附属工学力教育センターで行っている「ものづくりプロジェクト」は、学生がプロジェクトチームを組み、 技術開発プロセスの学習を行う科目で、工学部の共通科目になっています。1~4年生、院生などの多様な学年からの参加があるほか、 工学部の様々なプログラムから参加があります。複数年度継続して受講する学生もおり、今年度は合計127名(2022年2月末時点)の学生が参加し、 昨年度と変わらず8プロジェクトに分かれて活動を行いました。
 昨年度に引き続き、今年度のものづくりプロジェクトにおいても、新型コロナウィルスの影響を様々な場面で受けました。 一部の全国的なイベントは、オンラインでの開催となりました。工学力教育センターでも、感染者数などの指標に応じて、 活動時間の制限、一度に活動できる人数の制限など、感染症対策に配慮しつつの活動になりました。
 オンラインで活動できる仕組みも継続し、新たに座席予約システムの構築や、入退出管理表の作成、作業風景のオンライン配信などを行い、 制限の中でも学生の活動になるべく支障が無いよう、環境を整えてまいりました。その甲斐あってか、学生個人の感染や、 濃厚接触者の指定などはあったものの、クラスター等、多数の感染者を出さずに1年間の活動を終えることができました。
 学生の活動に目を向けると、様々な制約がある中、「NHK学生ロボコン大会」における決勝トーナメント出場、アイディア賞、 「全日本学生フォーミュラ大会」におけるベスト10入賞、CANSATプロジェクトが、新潟大学初の学生によるハイブリットロケット打ち上げ成功など、 様々な成果を残すことができました。以下に2021年度のプロジェクト活動を紹介します。

ロボコンプロジェクト

 ロボコンプロジェクトは、毎年6月初旬頃に行なわれる「NHK学生ロボコン」優勝を目指して活動をしています。 今年度のNHK学生ロボコン大会2021は、2度の延期を経て、10月10日に東京都大田区西蒲田片柳アリーナで、 感染症対策を徹底のうえ無観客で開催されました。今年度のルールは中国の伝統行事を模した「投壺」。 その名の通り壺に矢を投げ入れる、ロボットにとっては非常に難易度の高いものでした。 壺は全部で5つあり、それぞれ設置されている場所や高さ・投入口の大きさなどが異なります。 また、中央の壺は自由に回転できるようになっており、矢を投げ入れるロボットと、 壺を回転させるなどして相手の矢を妨害するロボットの2台が対戦する形で競技が行われました。
 予選リーグでは京都大学との2戦に勝利し決勝トーナメント進出(ベスト6)を果たしました。 決勝トーナメントでは最重要の矢を投げるアームの部品が破損し、東京大学に敗れはしたものの、 グルグルと回るアームで矢を投げる独特の機構が評価され、 トヨタ自動車株式会社様より特別賞を、 加えて、新潟大学初のアイディア賞に輝きました。この模様はYouTube (https://www.youtube.com/watch?v=jSL5CWUH6a0)で配信されたほか、12月上旬にNHK総合テレビで放送されました。
 プロジェクト活動では、新規受講生の教育に力を入れ、主に低学年の技術レベルの向上に力を入れました。 オンラインの仕組みもうまく取り入れ、制限がある中でもスムーズに活動を行えていました。

■ロボコンチーム(科学技術研究部)ホームページ
■NHKロボコンホームページ



学生フォーミュラプロジェクト

 学生フォーミュラプロジェクトは、全日本学生フォーミュラ大会に出場し上位入賞することを目標としています。 今年度の学生フォーミュラ大会は新型コロナウィルスの影響で、残念なことに実際のマシンを走らせる動的試験はすべて中止になりました。 しかしながら静的試験はオンラインで行われ、デザイン審査で17位、コスト審査で5位、プレゼン審査で25位、総合9位に輝きました。 総合で10位以内に入賞するのは、新潟大学で初めてです。
 デザイン審査はマシンのコンセプトに合致した設計が如何になされているか、設計や理論、取得したデータの妥当性などを審査されます。 コスト審査は車両1台を製作するためにかかった材料費、製作費をすべて部品ごとにCADとともに提出し、 その積算された費用の正確性を評価されます。プレゼン審査はプロジェクトを一つの自動車会社とみなし、 「利益が上がらない、打開策を考え、プレゼンせよ」 というテーマでプレゼンテーションの具体性や実現可能性を審査されます。
 これらすべての書類や審査を遅延なく終了したチームに対して自動車技術会会長賞が贈られました。 またSES(等価構造証明書)という書類が優秀だったことから、ベスト車検賞(2位)を受賞しました。
 この2年間は様々な制約があり、車両製作や試走などの活動が難しい状況が続き、 今まで蓄えてきた技術的情報が下の世代に上手く伝わらない恐れがありました。 そこで実際の製作が難しい期間には、今までの設計や基になった理論、製作ノウハウなど記載した詳細な資料を作成し、 次年度以降もスムーズに車両が製作できるようにしました。また車両を走らせる貴重な機会を活用し、 出来る限りの車両のデータを取得しました。

■新潟大学 学生フォーミュラプロジェクトNEXTホームページ
■全日本学生フォーミュラ大会ホームページ


CANSATプロジェクト

  「CANSATプロジェクト」は宇宙開発に関連する様々な競技に取り組むプロジェクトです。 何度かの延期はあったものの、学生/社会人によるロケット打ち上げ及び、 CanSatと呼ばれる自立ロボット制御の日本最大規模のアマチュア大会である「能代宇宙イベント」に出場しました。
 期間の前半はロケットの打ち上げ実験が行われました。CANSATプロジェクト ロケットチームは、 4年かけて完成させた学生による新潟大学初のハイブリットロケットの打ち上げに臨みました。 チーム結成から機体開発、フライトレコーダを含む電装部の開発、落下範囲予測に必要なフライトシミュレーションなどを行い、 打ち上げに漕ぎつけました。
 当日は悪天候の影響はあったものの打ち上げは無事成功し、落下位置を知らせる通信がロストしたため、 草むらの中を大捜索し、1日後に機体の回収も無事に行うことができました。フライトレコーダでのデータ取得もでき、 解析して次年度以降の開発に活かす予定です。

 期間の後半はCanSat競技が行われました。CanSat競技とは、ドローンなどで上空50m程度まで自立ロボットを打ち上げ後、 そこから落下され、その後自動制御で目的地を目指す競技となっています。 地面に着地してから車輪などを用いて目的地を目指すランバック競技と、空中を飛翔するなどして目的地を目指すフライバック競技があります。 新潟大学はランバック競技に2チーム、フライバック競技に1チーム出場しました。 ランバックチームは地磁気センサ、GPSセンサ、画像処理などを用いて近づき、 フライバックチームは同種のセンサとパラセイルを用いて目標に近づきました。
 ロケット部門では、陸打ち団体賞、個人賞(現場賞)を受賞しました。CanSat部門では、 ランバック競技、準優勝・3位、フライバック競技、準優勝など、 各種の賞を受賞しました。 また、新潟大学初のハイブリットロケット製作・打ち上げに関して新潟日報や読売新聞新潟県などの新聞に取り上げていただきました。

■新潟大学CANTATプロジェクト(NiCs)ホームページ


非産業用ロボットプロジェクト

 「非産業用(レスキュー)ロボットプロジェクト」は被災地などで活躍するレスキューロボットを製作するプロジェクトです。 ロボカップレスキューやWRS(World Robot Summit)と呼ばれる、レスキューロボットの標準性能を競う大会があり、 それら大会への出場と上位入賞を目指しています。
 今年度はそれら大会で使用される標準的なステージを作成し、大学においてもより実践的な試験ができるようにしました。 またロボットの機械的な補強や、モータ・制御システム・バッテリーの見直しを行い、 様々なステージを余裕をもって走行できる機体を製作しました。 年の後半には、大学の階段を1階から5階まで走破し、当面の目標であった大会での全ステージの走破が可能になりました。
 今後はマニュピュレータの改良を行い、大会で求められるバルブの開閉やメータの読み取りなどの課題にチャレンジする予定です。

■非産業用(レスキュー)ロボットプロジェクトホームページ


音響工学プロジェクト

 「音響工学プロジェクト」は、首掛け式で取り外ししやすい補聴器の開発を行っています。 通常の補聴器は、価格が高く、小型で紛失しやすく、高齢者には電池交換が大変で、軽度難聴者は長時間装着しないという課題点があります。 首掛け式補聴器はこれら課題を解決できるため需要があり、かつ補聴器全体の普及率を上げる効果もあるのではないかという思いから開発を行っています。 日本は高齢社会に突入していて、加齢に伴う軽度難聴者は今後増えていくと考えられるとともに、 難聴が人とのコミュニケーションを阻害し、認知症発症の引き金になるといわれています。 使いやすい補聴器は今後ますます重要になっていくと思われます。
 今年度はハードウェア班・ソフトウェア班に分かれて活動を行いました。 ハードウェア班は音声を取り込み・処理・出力する基板の製作と、その基板を納めるためのシェルの製作を行いました。 ソフトウェア班は取り込んだ音声の処理プログラムの開発、ゲイン調整、ノイズ除去プログラムの作製を行いました。
 今後は装着されている環境に応じて自動的にゲインを調整するプログラムの開発や、装着した際に自動的に電源が入るなど、 電池の消耗を抑える機能の開発を行っていく予定です。


理科実験教材開発プロジェクト

 理科実験教材開発プロジェクトは、主に小中学生向けに、アッと驚く、安価で楽しい理科実験教材を開発することを目的に活動しています。 今年度も昨年度に引き続き、新型コロナウィルスの影響で対面での理科教室の開催はできませんでした。 次年度以降の理科教室で使用する教材の作成と、YouTubeにおいて実験動画を公開する2つの活動を行いました。
 全体では「クントの実験」「光の混色の実験」「風力発電の実験」「テンセグリティ構造と力のつり合い」という4つの教材を開発しました。 クントの実験は、中学校1年生で学習する「音の性質」という単元に対応し、音は空気の振動による波であることを視覚的に理解してもらうことを目的としています。 光の混色の実験は、小学校3年生の「光で遊ぼう」の単元に対応し、加法混色と減法混色の違いを分かりやすく体験してもらうことを目的としました。 クントの実験は次年度以降の理科実験教室で使用し、光の混色の実験はYoutTubeで公開しました。
 次年度は、新型コロナウィルスの影響も落ち着いてきたことから、新潟市のボランティア団体に登録し、 今まで開発してきた教材を用いながら、本格的に理科実験教室を開催していく予定です。

■理科実験教材開発プロジェクトホームページ
■新潟大学理科実験教材開発プロジェクト YouTubeチャンネル


情報セキュリティプロジェクト

 情報セキュリティプロジェクトは、CTF(Capture The Flag)などの情報セキュリティの技術を競い合う競技などへの参加を通して、 情報セキュリティ技術のスキル向上を目指して結成されました。 日本最大級のCTFの大会であるSECCON(SECURITY CONTEST)で優勝することを目標としています。
 CTFには様々な分野があり、個人ですべての分野に精通するのは困難です。そのため低レイヤ班と高レイヤ班に分かれて活動を行っています。 低レイヤ班はバイナリ解析や壊れたファイルの復元などコンピュータの動作に深く関わる部分の問題を扱います。 高レイヤ班はウェブや通信の脆弱性に関する問題を扱います。 学んだことを少しずつ資料にまとめ、共有することでPJ全体の技術レベル向上を図りました。
 2021年12月18日~19日に行われた「SECCON2021」に出場し、総得点53Pt、506チーム中215位という成績を収めました。 今後はより初心者向けの「SECCON Beginners」にも出場し、こちらの上位入賞も目指していきます。


ロボマスタープロジェクト

 Robomasterはロボットコンテストの一つであり、ロボット競技とeスポーツを組み合わせたロボットによるサバイバルゲームのような真新しい競技になっています。 それぞれ役割が与えられた5種類以上のロボットが敵・味方に分かれて撃ち合います。 ロボットを俯瞰的に見ることはできず、ロボットに搭載されたカメラの映像だけを頼りに撃ち合いポイントを稼ぎます。
 ロボマスタープロジェクトのメンバーは「Phoenix Robots」という新潟大学、長岡技術科学大学、 長岡工業高等専門学校から約60人のメンバーが集まった団体に所属しています。 新潟大学では、「ダーツシステム」と呼ばれるロボットの製作を担当しました。
 ダーツシステムは移動することはできないロボットで、約30m離れた場所から相手の基地を攻撃するダーツを放ちます。 グルグルと回る腕のような射出機構でダーツを飛ばそうとしましたが種々の問題があり、30m先までダーツが到達しませんでした。 今後は他の方式のダーツシステムを考え、製作していく予定です。