工学の原点に帰ろう
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対談
工学の原点に帰ろう  〜工学力を修得する教育〜1.仙石正和工学部長×丸山武男初代センター長  司会:合田正毅工学部教授
工学の原点を目指す
合田  設立の動機などを、まず学部長の仙石先生お願いします。
仙石  大学への進学率が高まり、大学生になることが特別ではなくなってきた現在、教育を改善して卒業生の質を確保するにはどうすればいいだろうかということで文部科学省が行った施策の一つが、「特色ある大学教育支援プログラム」(特色GP、当初は教育COEと呼んでいました)です。これに応募し採択されたことが第1点です。第2点目は工学部の概算要求の話ですが、機械工場を工作センターに改組して、ものづくりの拠点にしようという計画があり継続して申請をしてきましたが、なかなか認められない状況でした。折しも「工学の基礎教育」をキーワードして教育改革をしようとする試みが他の大学で行われていました。新潟大学工学部では、我々の学部に適した、もっと違った切り口の取り組みができないかと考え、「工学力を修得する」ための教育をコンセプトに、工学の原点に帰る試みを開始したところでした。そこで、工学部の教育活動の目玉として、工作センターと総合したかたちで工学力教育センターを設立しようという話になったわけです。この話は教育COEに採択された内容と一体になっています。
合田  設立に至ってはいろいろご苦労があると思いますが、その辺の経緯を丸山先生お願いします。
丸山  卒業生の質の確保と、新潟大学の工学部の思いをどう結び付け、具現化するかというのが一番問題だったと思います。以前あるシンポジウムで、東大の前身である工部大学校が設立されたときの教育の方針と、今の新しい大学の工学部の工学教育とがかけ離れてしまっているというお話を聞きました。当時の工部大学校は、いわゆる実業教育を目指す総合工科大学という位置付けで、カリキュラムの半分以上は実地訓練だったそうです。それがあちこちに工科大学や工学部ができるにしたがって、学問に重点が置かれすぎるようになってしまい、工学が生産社会から遊離してしまっているのが問題だと言っておられました。
 そういう話がベースとして私の頭の中に残っていたというのが一つと、それからここ数年、「何でこんな勉強をするのかわからない。この勉強は一体どこで役に立つんですか」というような、非常に本質的な質問を学生から投げ掛けられることが多くなってきたという経験をしていました。工学というのは、ものをつくって社会の役に立つということが最終的な目標の一つですので、だとすれば、何を学ばなければならないか、あるいはつくりながら「これがわからないとどうもこの先へ進まないぞ」ということをわかってもらえたら本当はいいのかなと漫然とながら思っていて、それがちょうど「工学力」という、「学ぶ力」と「つくる力」の統合ということに結び付いたのです。
 この工学力教育センターは、特色GPの一環として設立されました。特色GPへの挑戦は、長崎大学、富山大学の両工学部と共同で行いました。学部内だけでなく、3大学間の調整という難しい面もありましたが、皆さんが大変良く協力してくれたので、今考えると、さほど苦労ではなかったように思いますね。だけど、約2ヶ月間は、ほぼかかりきりになりました。しかし今にして思うと、他大学や他学科の先生と議論しながら、一つの目的に向かって一緒に力を合わせることができたことは楽しかったですね。
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工学力教育センターの活動
合田  具体的に工学力教育センターが持っている内容についてお伺いしたいと思います。
丸山  センターの内容は、3つの柱があります。ものをつくる力を育てる部門。学ぶ力を育てる部門。そして、それらを総合してより良いカリキュラムをつくる部門。このカリキュラムは教員がつくって学生に押し付けるのではなくて、学生と教員が協力してつくる。これが最終的な成果物である工学力教育プログラムとなるわけです。
合田  実際には、ものづくり・アイディアコンテストが現在走り出しているわけですが、それは今どういう状況ですか。
丸山  第1回目は平成15年12月18日に、新潟大学で「ものづくり・アイディアコンテストin新潟」を3大学工学部共催でやりました。その翌日に富山大学へ行って、「−in富山」、それから翌年の1月26日に長崎大学へ行って、「−in長崎」。同じタイトルで最後の大学名だけを変えることによって共同のコンテストにしましょうということで行いました。
 これは先生方にずいぶん頑張っていただいたのと、この年私どもの大学の学生諸君がNHKのロボットコンテストで「アイディア倒れ賞」というすばらしい賞を受賞してくれたこと。それから、機械システム工学科がこの年から始めた創造工学実習で挑戦してくれたこと。それともう一つ、建築学科が栃尾の雁木を活かしたまちづくり活動の取り組みを行っていたこと。それらのおかげで3大学のコンテストが何とかできました。
合田  学生の反響はどうでしたか。
丸山  延べ200人ぐらいの学生諸君が訪ねてくれましたし、発表の面で積極的に参画してくれた学生もいました。学生同士、大学の壁を越えた交流が始まったというのが非常に良かったと思います。
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工学力教育センターに集う力
合田  工学力教育センターにはそれぞれの活動に関して組織がつくられようとしているわけですが、その中心にあるのは、工学力教育センターによる工学力教育プログラムの開発で、そこにかなり大事な機能が求められているように思います。それは今後どうやって充実させていくのでしょうか。
丸山  工学の分野は機械、電気、化学、建設、材料などたくさんあります。そのすべての分野に共通しているものは、基礎教育だと思います。それは数学、物理、化学などと一般的には考えますが、そうではなく、ものを考える基本といったらいいのでしょうか、そのようなものがあると思うのです。その具体的な教育プログラムをこれから探りたいと思っています。
仙石  卒業した学生が世の中へ出て活躍していくためにはどういう才能を伸ばしておいたらいいかということを、いつも我々は考えています。この才能は固定したものではなく、時代とともに変わっていきます。その変わっていくものに柔らかく対応する教育のシステムをつくることが大事で、その知恵袋がまさに工学力教育センターではないかと思っています。
合田  工学力教育センターの中に、情報発信をするという機能があるようですが、これは具体的にはどういう構想を考えているのでしょうか。
丸山  いろいろな機会に私どもの取り組みを発表することで、「新潟大学は、なかなか面白いことをやっているじゃないか」と感じてもらえたらいいですね。例えば日本工学教育協会は企業と大学とが一緒に協力しながら日本の工学教育をより良いものにしていこうという目的で50年も前につくられた組織です。ここで私たちの活動を発表するということは、取りも直さず、全国の多くの大学と企業に情報発信することになります。また、最先端の企業・研究所の技術者を交えて、技術開発を話し合う場 −企業week− が計画されています。工学を通して、企業・大学・地域がつながり、その活動を情報として発信できたらいいと考えています。
工学力は総合的な力
合田  このセンターがより発展していくためには、学部とどう連携していくかということが当面の課題の一つになると思います。今どういうことが工学部に求められているのか。お考えをお聞かせください。
丸山  組織的には、これは工学部の附属センターです。学部長を中心にして我々が活動するということですから、学部とセンターとは一体化しているものだと認識しています。学部教育との連携という意味からいえば、「技術の開発という作業そのものは特定の学問分野の知識だけでできることもあるかもしれませんが、大抵のものは総合力がなければできない。そのためにはいろいろな学問分野の力を結集してやらなければならない」という事実を、学生諸君が学ぶということが大事だと思います。
仙石  工学力教育センターが扱う領域は、工学のいろいろな分野に共通に横たわる基礎をなすものです。そのためすべての学科の協力が得られなければならないと思います。大正12年に新潟大学の前身である長岡高等工業学校が創立されたとき、初代校長の福田為造先生が示された建学の精神は「基礎を大事にする」ということで、この特徴を堅持しながら本学部は発展してきました。この工学力教育センターの基本概念は、もう一度その基礎の大切さに戻るということではないかと思います。
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24時間自由に使える、学生の自主運営に
合田  どのようなセンターをイメージしていますか。
丸山  基本的には学生が24時間自由に使えるようにしたいと思っています。例えば学生証を持っていれば入れる、あるいは入った記録が残るというような方法があると思います。もちろん安全性の問題を外しては考えられません。将来は、学生諸君に自主的な管理運営をしてもらう格好にできたらいいなと思います。
仙石  今の世の中の流れの中で、大学にはどうやって本当に実力のある学生を出していくかということが問われています。我々はこの工学力教育センターを中心としてその期待に応えていくということだと思います。
合田  最後に、若者に向けてのメッセージをお願いします。
丸山  先生も学生も楽しみながらできたらいいですね。「あそこに行くと面白そうだから行ってみようか」という雰囲気ができたらいいなと思います。
仙石  80年の伝統から生まれた、人づくりの環境はこのセンターでさらに充実します。その中に入って一緒に学びましょう。
仙石正和
新潟大学を卒業後、北海道大学に進学。大学院生時代と教員(助手)時代を合わせて11年間札幌で過ごす。子供の頃は、ラジオなどの分解・組み立てをするラジオ少年だった。同大学でグラフ理論、ネットワーク工学と情報ネットワークの魅力にとりつかれ、現在に至る。
丸山武男
新潟大学を卒業後、同大学に従事、現在に至る。主として、気体放電の物理現象に関する研究を専門とする。趣味は囲碁とゴルフだが、最近は趣味のための時間が取れない毎日が続いている。
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