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ブレークスルーを使う  〜超伝導による技術連携〜3.岡徹雄助教授×村上雅人教授
高温超伝導バルクモーターの夢
村上  これまでおやりになられてきた研究内容をお聞かせ願えますか。
 1986年に高温超伝導が発見された直後、私はたまたま興味本位で日本物理学会の大会に参加していました。ものすごいフィーバーぶりで、聴衆で講堂がいっぱいになりました。これが私の人生をころっと変えました。
 その時点で超伝導材料の研究開発が既に開始されていましたので、別の研究テーマを探しましょうということでバルクに着目しました。今までの低温超伝導体のニオブ・チタンではバルクはありませんでしたので、新しい挑戦でした。私たちがいろいろと試みているうちに、村上先生が融解法を始められたのです。これだと思いましたね。
 高温超伝導バルクで私たちが最初につくったのが超伝導モーターでした。低温超伝導ではモーターの実現が難しかったのですが、高温超伝導バルクを磁石にすれば実現できるのではと考えつきました。正直にいうと、これは私一人のアイディアではないのです。ある有名な先生の指導のもとで超伝導線材を利用したモーターの開発が行われていました。そこで、私は「バルていました。そこで、私は「バルクを焼いてきたのですが、これに入れ替えたらモーターになりますか」と聞きました。そうしたら、その担当者は、彼らの低温超伝導モーターをわずか3日間で、高温超伝導モーターに取り替えたのです。新聞報道もありましたし、海外でもテレビでも取り上げられて、会社の株もガーンと上がったので、客先に持っていきました。「そのモーターをいくらで売るつもりだね?」と尋ねるので、「600万円かかりました」と答えると、「そのようなモーターは売り物にならないな」と言われました。いわゆる技術の死の谷が…。
 超伝導モーターは今でも夢なのですが、そのときは方向転換しました。自分たちのオリジナリティーは何かと考えたところ、やはりバルクで磁石を実現したことだと気がつきました。それで、磁石として利用できるかという観点で研究を進めています。
丸山  分野の違う人たちと協力するということも大事なのですね。いろいろな視点でアイディアが出てくる可能性がありますからね。
村上  最近になって、バルクモーターに取り組んでみたいというところが結構出てきましたね。ヨーロッパでも行われている。やはり「やってみよう」という人が出てくることが大切なのですね。
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アイディアを出すこと、使うこと
村上  アイディアマンですよね、岡先生は。バルクというのは高温超伝導で初めて応用が可能となった材料ですから前例がないわけです。それをいかに使うかというのが非常に大事で、使いたいという人を掘り起こさないといけません。それを岡先生はやってくれるのですよ。いろいろな応用の芽が出てきていますね。
丸山  私も岡先生から覚えきれないほどたくさんのアイディアを聞かせて頂きました。
村上  今までなかった分野ですから、機能も含めて新しいので、いかにアイディアを出して使ってもらうかというのが大事です。超伝導がもつ能力を最も引き出すことができる応用とは、磁石として使うこと。しかも非常に強力な磁石になることです。磁場というのは意外と使われていません。
 バルクの磁石がどのぐらいの磁場まで捕捉できるのか。これは村上先生の最近一番のトピックで『Nature』に掲載された論文には18テスラまで上げられるとありますが、それはまだ途中なのですよね。
村上  そうです。50テスラまで想定しています。
山口  機械強度を考えるとそこまでは無理なわけですよね。
村上  それは解決しました。バルクはセラミックスなので、それだけ強い磁場を捕捉したら割れてしまいます。どうやって解決したかというと、バルクに穴を開け、なかに金属を含浸したのです。ですから強度だけなら50テスラにも耐えられる。ただ問題なのは50テスラの定常磁場を出す装置が世の中にないということですね。
小川  バルクと思えないぐらい、本当の金属の固まりみたいでした。
俺の炉「世界最高記録」
村上  ファイバー状の中に金属を入れ、まわりも金属で含浸できるわけです。特性が良いといっても使っているうちに割れてしまうのはどうしようもないです。電流が流れて磁場がかかるとローレンツ力が作用しますからね。一度ヨーロッパの連中に皮肉を言われました。おまえのところはいつも記録を出したと言うけれども、割れてしまうではないかと。記録を出したら終わるわけです。
 割れるまでやるのは、棒高跳びと一緒なのです。棒高跳びの選手はどこまで跳べるか挑戦しますよね。そして、必ずバーを落として終わります。
 バルクをつくるには簡単な炉が必要です。半導体のように高くて均熱性の良い炉でなくても、高温超伝導バルクはつくれます。ですから、たくさんの炉を使ってバルクをつくることができる。つまり、学生一人一人に「俺の炉」というものができるのです。そうすると、学生はものすごくプロになるのですよ。炉をつくることは学生にとって良い教材になっています。セラミックスですから、焼結の学問だとかも必要になるし、まさしくものづくりですよね。
村上  以前、岡先生が指導していた学生が当時の世界最高記録を出しました。他の人がやっても出せない、彼しか出せないのですよ。あれはびっくりしました。
丸山  彼が記録の出るものを次々とつくったのは、彼のどういう能力によるのでしょうか。
村上  そこがわかれば大変なことだと思うのですが。
 彼らは私たちのところにしょっちゅう来ていました。写真を撮ったり、研究員と議論したり、一緒に研究発表をしたりします。そういうことをやりながら、技術を共有できたということですね。企業だけではだめです。大学の先生が一緒に入ってそこに物理的な真理を持ち込むのですよ。
 学生たちは明らかに私たちに自分の将来を見たと思いますよ。若い研究員もいるし、私のような研究リーダーもいます。大学と企業の共同研究チームを通じて、学生は企業社会を見ることになります。一人でコツコツと研究するだけではなく、自分が知らないところを埋めるために人をいかに使うかということを学ぶでしょう。大学の中だけではなく、企業に来てもらって研究を行うことも学生にとって大きな刺激になると思います。私たちのことを「非常に生き生きしている」と評した学生もいました。
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超伝導と工学力教育センター
村上  将来、工学力教育センターをどういうふうに育てていこうと思っておられますか。
 学生と教員と企業がワイワイガヤガヤとアイディアを出しながらできればいいと思っています。
村上  企業も参加されるのですか。
 もちろんです。近隣の企業だけでは物足りません。世界中から参加してもらわなければならないと思います。先輩がいる、海外とも連携できる、新しいアイディアを自分の教室に持っていって威張れる、そういったところを工学力教育センターの魅力にしたいですね。
福井  ありきたりな「ものづくり」は大学でやる必要はないと思います。
 一つ考えていることがあって、それはブレークスルーがあったものを使うということです。高温超伝導というものすごいブレークスルー。青色ダイオードもそうです。学生にブレークスルーをやれと言ってもそれは難しい。年に数個しか出てこないものに対して、「それを目指せ」と言っても動機付けにはならない。ところが、ブレークスルーがあればそれをめぐる世界がガラッと変わります。だからそこに新しいチャンスというのがあるのではないか。だからそこをつかんでいくというやり方も必要かなと考えています。
福井  高温超伝導やバルクは材料研究がずっと続いてきて、ここで本当の商売になる応用が出てこないと息切れします。一つの成功例があればもう一度生きながらえると思います。学生が何か一つの基点となる可能性も否定できませんね。そういうのが出てきたり、そういうのをつくる場というのは面白い取り組みだと思います。
村上  高温超伝導のバルクが面白いと思うのは、アイディア次第で良い製品をつくれることです。だから学生だってチャンスがある分野ですよね。
山口  新しいアイディアとか良いものをつくるためには、ある程度自由にさせなければいけないのでしょうね。
 超伝導で私が圧倒的に尊敬しているのがMRIでして、大企業なのに山口先生はどのようにしてその研究開発に取り組まれたのでしょうか。
山口  超伝導がMRIであれだけ成功したというのは、やはり命に関してお金に糸目をつけないからです。現在あるものを超伝導にしようと思っても成功しないですよ。核融合とかエネルギー貯蔵とか特殊分野は超伝導でなければだめで、その中で医療分野では成功しているわけですね。
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超伝導で環境問題にチャレンジ
丸山  環境に貢献できる取り組みを考えておられるようですが、少し説明して頂けますか。
 水をきれいにすることに磁石が使えるのではないかと考えています。血液の中から抽出するという小規模のものから、赤潮をきれいにしようとか、オイルフェンスの代わりにしようという大規模なものがあります。非常に小さいものでしたら、永久磁石を使って分離ができます。ところが少し大きくなりますと、バルク磁石がちょうどいいかもしれません。もう少し大きくなりますと、カオリンの精製のように超伝導マグネットを使うことになります。
 環境に関する磁場応用には幾つかの選択肢があって、それらの技術を集積することによってこれでやれますよということがわかると、どこにこういうニーズがあるから、それにはこれを使いましょうと話になると思うのですね。技術集積はセンターにある必要はなくて、こういう技術があります、こういうニーズがあります、というやりとりが行えるネットワークを構築することができれば、かなり面白い社会貢献ができるはずです。その過程自体がものづくりそのものですし、いま環境に対する意識も高まりがありますので、それが学生の興味を惹き、地域産業の利益にも結びつくと考えています。企画段階ですが、各方面との話し合いを既に始めています。
丸山  福井先生がおやりになっている磁気分離ももちろん利用されるということですね。それから、人と人のつながりをいかにうまくつくっていくかということも大切ですね。工学力の「力」には、マンパワーという力も入れてもらうといいかもしれません。
 大学と企業とが一緒になってやることが非常に重要ではないかなと思っています。
山口  純粋にものを開発するという意味で良い面がありますね。スケジュールやコストの管理がきちっと決まっていますから。良い面は大いに活用すべきです。それから、大学はやはり自由な発想で好きなことをやれるというのが良いのではないでしょうか。
学生へのメッセージ
村上  学生に言いたいのはチャレンジ精神を持てということですね。目標を高く設定して、それに向かって頑張っていく。とにかく何かに挑戦するという気概を持って欲しいと思います。物欲は限られていますが、人間頭の中で何かしようと思ったら、これは無限です。これに挑戦しない手はありません。
 大学との共同研究を通して学生に「面白いですよ」と言ってきました。私が取り組んでいる研究テーマ、私が面白いと思っていることは皆さんにも面白いはずです。一緒に楽しもうじゃありませんかというのがメッセージです。
村上雅人
東京大学工学部金属材料学科卒業。新日鉄の研究員を経て、現在芝浦工業大学工学部材料工学助教授。著書・受賞歴多数。
岡 徹雄
京都大学工学部金属加工学科卒業。 。アイシン精機の研究員を経て現在新潟大学工学部付属工学力教育センター助教授。
  芝浦工業大学村上雅人教授をお迎えしての座談会。
出席は工学部電気電子工学科の山口貢教授、福井聡助教授、小川純助手、工学力教育センターの丸山武男教授、岡徹雄助教授の皆さん。
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